偽物の恋をきみにあげる【完】
──俺は月奈(るな)に、3度も恋をした。

1度目は中学の時、あれが俺の初恋だった。

中1で同じクラスになった月奈は、別に特別可愛いわけでもなく、体は痩せているのにやたらまるい顔した、小柄で大人しそうな女子だった。

でも、中身は全然大人しくない。

よく喋るしよく笑うし、気が強いしわりと短気で、すぐ落ち込むし、でも立ち直るの早いし、たまに天然で、なんかたまにツンデレ。

カメレオンみたいにころころ表情が変わる、見てて飽きないヤツだった。

面白がって弄ってる内に、気づいたら好きになってた。

「コイツ好きだわ」が恋だって理解するのに、かなり時間がかかったけど。

俺達の仲は、すごくよかったと思う。

その当時、俺はとても純情少年で、ふざけた勢いで月奈と身体が触れる度に、バカみたいにドキドキしてたのは覚えてる。

修学旅行の夜、俺はついに月奈に告白しようと決心して、月奈を呼び出そうと女子の部屋に向かった。

でも、部屋の前で待ち構えてた学年主任に捕まった。

懐かしいな。

その後は特に何事もなく、仲がいい友達のまま、中学を卒業した。

告白はしなかった。

だって、引っ越すって聞いてたから。

そんな感じで、俺の淡い初恋は終わり。

それから10年間、月奈には一度も会わなかった。

アイツは、成人式にも来なかったし。
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