偽物の恋をきみにあげる【完】
月奈と再会したあの夜のことも。

月奈とふざけ合いながら歩いた真冬の道も。

いつも待ち合わせした駅の人ごみも。

2人でよく買い物したスーパーも。

月奈の宇宙一うまいカレーライスの味も。

初めて見た月奈の泣き顔も。

月奈の家の小さなベッドも。

俺に抱かれる月奈の、髪の香りも肌も喘ぐ声も。

そして、虎太朗にくれた、たくさんの言葉も。


その時感じた色も匂いも温度も、何もかも、まるで今この瞬間みたいに思い出せる。

いつだって「好きだよ、愛してるよ」って言いたくて、でも言えなくて。

切なくて、苦しくて……。

だけど、どの瞬間も幸せだった。

月奈が俺の世界を明るく照らしてくれたから、本当に幸せだったんだ。


本気になったら、絶対に辛い。

本気にさせたら、絶対に後悔させる。

そんなのわかってたけど、無理だったよね。

大河がゴッコしようが、虎太朗がネカレしようが、どんなに偽物の恋をしようとしても、やっぱり本気になった。

俺の最後のワガママに、付き合わせてごめん。

俺と恋をしてくれてありがとう。
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