無愛想な王子は理想の花嫁に求婚する
【どうして……】

「ああ、もう、動くんじゃないよ。
あんた一週間も眠っていたんだよ?
熱も全然下がらないし、主人が運よく川縁であんたを見つけて来なかったらどうなっていたか……」

ベッドサイドのテーブルに持っていた桶を置き、ティアナの額に乗せていたタオルを取ってザブザブ洗うと再び乗せられる。
冷たくて気持ちよくて、少しだけ目を細めた。

「気分は?痛いところは?
ああ、痛くないわけないね。
身体中痣だらけだからね」

【あ、あの……】

「そうそう、ティアナがクヴェルにいることは誰にも言ってないよ」

【えっと……】

「婚約者候補とか二国間で持て囃しておきながら……。
何でティアナがこんなことにならないといけないんだい……」

ポタポタと、女将さんが涙を流しながら震える手でティアナの手を握ってくれる。
かなり心配をかけてしまったのだろう、ごめんなさい、ありがとう。を繰り返すが読唇術が使えない女将さんには伝わらないかもしれない。

それでも何度も繰り返すと女将さんが笑ってくれたので、伝わったかもしれないとティアナも小さく微笑んだ。
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