あの日勇気がなかった私たちは~卒業の日~
言えなかった言葉
翌日、卒業式当日ーーー

少し寝坊してしまったが、手早く準備をしていつもよりも少し早く家を出ることができた。

なのでいつもよりもゆっくり学校に向かうことにした。
空を見上げてみるととても青い空が広がっていた。空気が澄んでいるのだろう、いつもよりも空が青い。

家から10分、そうすれば最寄り駅に着く。最寄り駅で電車に乗ると今日も人が多い。
通勤ラッシュのこの時間帯は、電車に乗るのにも一苦労だ。乗れずに一本見逃したことだって何回もある。
そんな人だらけの電車で新聞を読んだり、スマホでゲームができる人たちは素直にすごいと思う。

(この寿司詰め状態だけは三年間なれなかったな・・・)


高校の最寄り駅で降りると、ホームにはちらほらと同じ制服を着た子がいる。

この駅はうちの高校の生徒が一番多く利用しているから、私がいつも乗っている電車より二本ほど遅くなると、高校生でごった返す。

それがいやでわざわざ二本早いものに乗っているのだ。


駅から高校まで約15分。飲食店が多く、住宅は少ない。
だから帰りに高校生が寄り道できる場所は多い。

(このカフェでいつもしゃべっていたなあ。あ、あそこで莉子と愛の誕生日プレゼント買ったっけ)

街をゆっくり歩いて行くと思い出が次々とよみがえる。
どこで、誰と、何をしたか。全部はっきり覚えている、まるで昨日のことのように。
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