スイート ジャッジメント 番外編

「どしたの?」

「……なんでも、ありません」

「え、何。その喋り方。俺なんかした?」

「ううん。何にもしてない、です」

 湊には普通の事なんだよね、さっきみたいな女の子。去年の文化祭でも……囲まれてたし。……メンタルってどうやって鍛えるんだろう。

「うち、ここね」

 湊が足を止めたのは、閑静な住宅地の一軒家。二台車を停められるカーポートには車はなくて、少々年季のはいったバスケットボールのゴールが確かにそこに佇んでいた。

「で、目の前、千紗んち。で……」

 目の前の家の表札には、確かに東海林の文字。そして、湊は視線を東海林先輩の家の左どなりへと向ける。

 そこは、塀はあれど家そのものは一軒分先にあった。

「あれ、友香んち。でけぇっしょ」

 それだけ言って、湊は家の鍵を開けて中に入る。

 ……ええと。もしかしなくても、車も無いしご両親、不在?

「あ、湊。これ」

 駅で買ってきたお菓子を出したら、別にこんなの要らないのに、と苦笑いされた。

「俺の部屋、上ね」

「……うん」

 階段を登ってすぐドアが2つあった。そのうちの右側のドアを開けて、湊が「どーぞ。あんま片付いてないけど」と入るように促した。

< 9 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop