溺れろ、乱れろ、そして欲しがれ
11月半ばの早朝はブルブルと身震いする。

尚且つ、気が重い。

待ち合わせ場所のホームへ着くと、すでに東雲さんの姿があった。

遠巻きに見てもすぐに分かる。

それくらい彼の存在感は周りとは群を抜いて違う。

行き交う誰もが振り返り、頬を染める。

通常の反応だ。

私とは明らかな温度差。

距離が縮まる中、腕時計をチラッと確認する仕草に迂闊にも引き込まれてしまう。

「フゥーッ」

一呼吸置いて、冷静に自分を取り戻した。

振り回されてたまるもんですか。

私のテリトリーには誰だろうと踏み込ませない。

もう少しで目の前に届くところまできた時、見渡していた東雲さんと視線がぶつかった。

フワッと優しい笑顔を向けられて、胸がキュンと高鳴る。

なに、、、これ。

やめてよ。こんなの。

仕事なんだから、それ以外のなんでもないんだから。

ザワザワとしていた外部の声が遠くに聞こえる。

まるで、私達の間だけ時間が止まったみたいに、、、





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