【バレンタイン&ホワイトデーSS】【番外編】最後の夜に「愛してる」を誓って
その日の夜。俺は早めに仕事を切り上げて帰ろうとしていたのだが、彼女があまりにも残業を粘るからタイミングを逃してしまった。

こんな日くらい、早く上がれよ。

その若さで、デートの予定のひとつもないのかと、こちらが心配になってしまう。

……早く帰ったら帰ったで、生意気だがな。

あの無垢な瞳が別の男に向けられていると思うと、それはそれで腹が立つ。

彼女に手を出すつもりなどないが、独占欲だけはしっかりと感じていて、矛盾だらけの自分に嫌気がさすくらいだ。

長い間面倒を見てきたせいで、愛着が湧いたのだろうか?

恋愛感情というには大袈裟で、師弟愛というほど崇高なものでもない。

……ま、あれは特別だな。

キラキラとした無垢な瞳が、荒んだ俺の心を惑わせる。

かまってやりたくなる性格は彼女の美徳なのかもしれない。
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