リアル人生ゲーム(裏)
私は、久しぶりに【順弦堂】にやってきた。
ばばあは相変わらずレジ奥で居眠りをしている。
色んな文房具品を見て回り、万年筆に手を伸ばす。
それをこっそり__レジに差し出した。
「おや、お嬢ちゃんかい」
「これ、買うから」
「ほう、随分とまた景気がいいようだねぇ」
婆さんは皺くちゃの顔をゆるめ、にんまりしている。
「それからこれも」と、私は封筒を差し出す。
「なんだい?」
「これまで盗った分のお金。全部返すから」
そう言って、万年筆の代金も支払う。
全部で15万ほどの出費になるが、可愛いものだ。
私は3億円を手に入れたのだから。
だいぶ前に、未知瑠とお遊びで買っていた宝くじが1枚、当たっていたんだ。買ったことすら忘れていたが、まだ換金はしていない。
競馬とは違い、未成年が換金することができない。
誰に頼もうかと、みんなで考えているところだ。
私はまだ競馬のお金が残っていたので、こうして返しに来たというわけ。
もちろん、目的はそれだけじゃない。
「もう売ってないの?」
「なにをだい?」
「リアル人生ゲーム」
私がそう答えると、婆さんは目を細めた。
「あれ、やったのかい?」