狼を甘くするためのレシピ〜*
「ケイ、私ってあなたの何?」

「ん? うーん。――お前はどう思う?」

 ケイはにやにやと薄く笑う。

 ――なんてふざけた男だろう。

「質問を質問で返さないで」
 きりきりと強く睨みながら思った。

『あなたの何?』ですって?
 一体自分は何を言ってるんだろう? これでは告白しているみたいではいか。

「あー、もういいわ」

 自分にうんざりして溜息交じりに踵を返した時、後ろからふわりと抱きしめられた。


「お前は俺の女だ」

 ――え?

「どうした?ご機嫌斜めだな。飯でも食っていけよ。俺が作ったやつだから味の保証はないけど」

「――自分で作ったの?」

 思わず振り返った瞬間に、スッと唇に触れるだけのキスが落とされた。

 それだけで心が震えて泣きそうになる。

 二度目のキスは深く甘く、苛立つ棘を包み込むように溶かしていく。

 ちょっと背伸びをしてケイの首筋に回した手。

 唇が離れても、強く抱きあったまま言った。

「トマトソースの匂いがする」

「ああ。チキンのトマト煮だ。ワインに合うと思うぞ」

「食べたい」

 それから一時間後。蘭々は母にメールを送っていた。

『ママごめんなさい。友達のところに忘れ物しちゃって。ついでに今日も泊まっていく』
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