グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~

 客間を出て、シルビアを追いかけてきたマロンディス・・・。

「ちょっと待てって! 」

 マロンディスは、玄関を出るシルビアの手を掴んで引き止めた。

 何も言わず、シルビアは背を向けたまま立ち止まった。


「どうして、俺の事を見ようとしないんだ? 」

 尋ねられても背を向けたまま、シルビアは何も答えず黙っている。

「怒っているのか? 俺の事」

 ん? とした目で、チラッとシルビアはマロンディスを見た。

「6年前。好きだとも言わないまま、お前の事・・・抱いたから・・・」

 
 覚えている? 

 どうして? 

 背を向けているシルビアの目が、かすかに泳いだ。


「ごめん。ずっと、抑えていたんだ。でも、あの時。お前の顔が目の前にあって、それを見た瞬間。抑えていた気持ちが、抑えきれなくなって、止まらなくなったんだ。本当に、ごめん」

 握られているマロンディスの手が、震えている・・・。

 その震えは、シルビアにも伝わってきた。


「だけどお前、どうしてなんだ? 俺だけ、地上に反して。全てなかった事にするなんて・・・。酷すぎるじゃないか・・・」

 上ずる声を悟られないように、少し小さめの声で言うマロンディス。

 その声を聞くと、シルビアは胸が痛んだ・・・。

「6年間・・・俺は真っ白な中で生きていた。頭では何もわからず、ずっと記憶がないままで。ただ・・・俺の魂だけは、ずっと、大切なことを忘れていると語りかけていた。だから俺は、ディアンナとは籍を入れていない。もちろん、指一本触れたこともない」

 背を向けていたシルビアが、ゆっくりとマロンディスに振り向いた。

 

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