グリーンピアト物語~地底の皇女と地上の皇子~

 ランフルクは驚くより先に体が動いて、少年に駆け寄り、ギュッと抱きしめた。

「あ、あの・・・」

 少年は突然抱きしめられ、驚いた顔をしている。


「よく来てくれたね。君をずっと、待っていたよ」

 そっと身体を離すと、ランフルクは少年に満面の笑みを向けた。

 少年はきょんとして、ランフルクを見ている。

「君は、マロンディスの子供だろう? 」

「え? ・・・お父さんの事、知っているんですか? 」

 きょんとして答える少年の声は、幼少期のマロンディスの声にそっくりである。

「ああ、よーく知っているよ。だって僕は、マロンディスの父親だからね」

「お父さんの・・・お父さん? 」

「うん、そうだよ。だから、君にとってはお爺ちゃんになるよ」

 少年は目をパチクリさせた。

「お爺ちゃん? おじさんじゃないの? 」

「え? 」

「・・・お爺ちゃんは、もう魂になっているから・・・」

 赤い透き通る瞳で見つめられると、全てを見透かされているようで、ランフルクはドキッとした。

「ごめんなさい。僕、間違えてしまったようで。すぐに帰ります」

「あ、いいよ。ここにいて、お城は危ないから行っちゃだめだよ」

 ん? と、少年は首をかしげた。

「あ、そうだ。君の名前を教えてくれるかな? 僕はランフルクっていうよ」

「僕はジックニーです」

「ジックニー。とっても素敵な名前だね」

 
 ひょいと、ランフルクは少年ジックニーを抱きかかえた。

 背の高いランフルクに抱き上げられると、ジックニーは見える位置が変わって驚いた目をしてる。


「ねぇ、この乗り物はもしかして恐竜? 」

「はい、でも襲ったりしません。とっても大人しいですよ」

「そうだね、とっても穏やかな目をしているね。じゃあ、この子はここにいてもらって、とりあえず中に入ろう。もうすぐ、お父さんとお母さんがここに来てくれるからさっ」

 ジックニーを抱き上げたまま、ランフルクは別荘の中へ入って行った。
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