恋は小説よりも奇なり

そして、珠子が奏のマンションへ訪れるたびに持ち込むファンからの贈り物。

確認をしろと言うから作業的にそれを行い、ひとつとして受け取っていない。

受け取るという行為はそこに何かしらの“絆”が生まれる。

それが太くて頑丈なものなのか、それとも細くてもろいものであるかは奏にとってどうでもいいことだった。

問題なのは関わりという“絆”ができてしまうということ。


絆が途切れた時の喪失感を――…雪乃を失った時のような悲しみを奏は二度と味わいたくなかった。

だからこそ、誰かと関わりを持つ事は極力避けてきた。

雪乃と結んだ絆を最後にしよう、と心に決めていた。

あの夜、公園に置き去りにされたプレゼントを持ち帰りさえしなければ、大した関わりも持たずに済んだはずだった。
< 68 / 250 >

この作品をシェア

pagetop