大嫌いの裏側で恋をする


この手の話を、あんな、流暢に話せる奴じゃないだろうに……と。

「ただ、ちゃんとお別れは言えてなかったよね」
「お別れ?」
「うん、三年……違うか、四年近く付き合って。大学の頃は友達で就職してからは彼氏で。長いこと一緒にいてくれて、ありがとって言えてなかった」

しんみりと話し出して、俺に背を向ける形で熱弁してる石川はもちろん、俺が聞いてるとは思ってないだろうから。

(いつ声かけりゃいい空気なんだ、これ)

ありがとう、の言葉に悠介は情けなく眉を下げて「俺も、ありがとう……勝手、ばっかしてごめん、美波」と、今にも泣きそうな声を出す。

逆じゃねぇのか、と突っ込みたいところだが。もちろんこれも堪える。
それぞれの形があるんだろうから。
いや、あったんだろうから。

「もう、泣かないでってば! 変わんないなぁ、悠介は!」

石川が俺には見せない、顔で心配そうに背中を軽くポンっと叩く。

それから振り返り、俺とガッツリ目が合ったわけだけど。

「ぎゃ!」
「……あ?」
「高瀬さんがいたんだった」

気恥ずかしそうに、ほんのり顔を赤らめる。

「何言ってんだ。俺のが先いたし、つーか何? 聞かれちゃまずかったのか」
「違いますよ! す、すみません……巻き込んでしまって。私だったらこんな場面遭遇したくないと思うし……」

しゅんとうなだれる姿に、不覚にも、なんだ……。
可愛いとか思ったから。
 
誤魔化すように「別にいーけど」と、不貞腐れた声を上げつつ。悠介にチャリを差し出すとおずおずとハンドルとサドルを持ち、受け取った。

「じゃあ、美波……と、彼氏さんもすいません。帰ります」
「おう、帰れ、早く、マジで」

しっしっと追い払うようにジェスチャーすると「高瀬さん!!」と、甲高い声が責め立ててくる。

いや、だからお前どっちの味方だよ?

「あ、悠介! 何があったのか知らないけど、スッキリしてないならちゃんと話しなよ相手と」
「え?」
「いや、ほら、悠介……そんな感じの顔してるから、話したいのって私よりそっちの人でしょ? 悠介、ちゃんと好きじゃなきゃ付き合ったりしないじゃん」
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