夏のソラの雪
散々止めた俺を無視して、真雪はマンションの下まで見送ると言ってきかなかった。





嬉しそうに右手に抱き付いた真雪に合わせて、歩幅を緩める。




「愛与っ」




名前を呼ばれて、視線を右下へと移す。




「……約束が叶ったら、ずっと一緒」




見上げる真雪は、こう言ってにっと笑ってみせた。




そんなの当たり前だろ?




言おうとしたのより早く、




「もし叶わなかったら……もう会わない」




真雪が続けた。




「……有り得ねぇだろっ。バカっ」




誰も居ないエレベーターホール。




真雪の額を軽く小突いた後、




「絶対有り得ないから。おまえしか……」




真雪を抱き締めて小さく呟く。




俺が言っても説得力無いな……このセリフ。




でも、




俺の背中に回した真雪の手が、ぎゅっと制服を掴んだのを感じて、




俺は安心していた。
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