夏のソラの雪
守りたい
「愛与」




朝一で顔を合わせた泰希が、俺を呼んだ。




ぎこちなく笑って手を挙げた泰希に、軽く言葉を返す。





真雪を乗せたタクシーが無事に、病院に戻ったことを教えてくれたのは泰希だった。




なんで泰希が病院に居るんだ、って疑問が無いワケじゃない。




しかし、




「ちょっと良い?」




泰希に手招きされるままに向かった屋上で、




待ち受けていた知海を見て、なんとなく納得した。





「昨日、なんですぐに真雪を病院に帰さなかったの?」





俺の顔を見るなり、開口一番で噛みついてくる知海に少し面食らう。




「……ごめん」




両手を軽く握り締め、小さく頭を下げた俺に、




「……嘘よ。戻って来た真雪、嬉しそうだったから」




ずっと険しかった表情を緩めた知海が、




「ありがとう」





こう言ってはにかんだ顔は、どことなく真雪に似ていた。






< 81 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop