冷徹騎士団長の淑女教育
すると、アイヴァンがわずかに目を見開いた。

そして、我に返ったようにクレアの手を離す。



いまだ震えているクレアを前にアイヴァンは眉をしかめると、顔を背けて忌々しげに舌打ちをした。それから、スッと立ち上がる。

「これからは、四六時中ベンに君を見張らせる。日曜日の外出も、当面レイチェルに付き添わせる」

ベンとは、庭師の男の名前だ。アイヴァンは、彼にレイチェルと同じくらいの信頼をおいている。

「……分かったな」

最後に吐き捨てるように言い残すと、座り込んだままのクレアをそのままに、アイヴァンは茂みの向こうへと消えて行った。
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