冷徹騎士団長の淑女教育
「しばらくの間、別件は休め。お前はここにいて、四六時中クレアを監視しろ」

「かしこまりました」

スッと頭を下げると、ベンはどこかへ消えた。アイヴァンの命令にはどこまでも忠実な男だ。早速、クレアを見張るつもりなのだろう。

アイヴァンは邸に入ると、つかつかと応接室まで歩み、ソファーに腰を落とす。

ふうっと一息つけば、今更のように窓の外の澄んだ青空が目に入った。




青々と茂る芝生の上で、向かい合うようにして座っていたクレアとエリックの姿が頭から離れない。

まるで絵画を見ているように、みずみずしく美しい情景だった。それほどに、並び合う二人は釣り合っていた。自分とクレアが同じようにしたら、全く違った印象になるだろう。

あの瞬間、アイヴァンはエリックの若さに嫉妬していた。




――クレアは、美しく育ちすぎた。




近頃、アイヴァンはそれを痛切に感じた。彼女が美しく淑やかに育つことを誰よりも願っていたはずなのに、素直に喜べない自分の未熟さが不甲斐ない。
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