君等の遺した最後の手紙は。(仮)

「みゆうちゃん!」
「桜紅先輩!お久しぶりです!」
その日、初めての部活を終え、桜紅先輩が話しかけてくれる。

桜紅先輩は東中出身で、1つ上の先輩だ。だから、彼女は華穂の死を知っている。故に私の心に存在する傷にも気づいていそうだ。

「みゆうちゃん…大丈夫? その…華穂ちゃんの件…」
あぁ。やっぱり見抜かれてる。
私の想いなんて、周りから見ればきっとバレバレなのだろう。
随分前、そんなことを華穂から言われたっけな、なんて思い出す。

「・・・あんま大丈夫じゃないかもです。」
思わず飛び出した本音。緩い笑顔を作るも、すぐほどけてしまう。
「そうだよね…華穂ちゃんとめっちゃ仲良かったもんね…」

ーーせんぱい。やめて…。ー
これ以上私の心、抉らないで……。いたい、いたいよ…

「ごめんね、思い出させちゃったよね、とりあえずこれからも仲良くしようね!」
先輩の察しがいいのか自分がわかりやすいのか、はたまた両方なのか定かではないが、ひとまず話が変わったことに安堵する。

「大丈夫ですよ〜!よろしくお願いします!」
また強がった。
「ならよかった… ビシバシ指導するからね〜?」
「うわぁ、怖い」
中学時代にも交わしていた軽い会話に懐かしさを覚える。

「未侑〜 帰ろー!」
同じくバド部のお姉ちゃんから声が掛かる。
「いまいく〜!それじゃ、また明日です!」
「うん!ばいばーい」
桜紅先輩がにこやかに手を振る。
つくづくフレンドリーな人だ…。
そんな風に変わりなく見える桜紅先輩に半分呆れ、半分感心しながらお姉ちゃんのもとに駆け寄った。
< 14 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop