約束～悲しみの先にある景色～
泣いたから少し重い目を真ん丸に開き、私は首が痛くなる程に上を見て、その建物の全貌を目に焼き付けた。


軽く30階までありそうな高さで、ベランダの柵がガラス張りになっている。


周りを見渡しても目を引くこのマンションの近くには木々や小さな公園もあり、自然が残されているのが分かる。


そして、近くには建設中とみられる同じ様なマンションが───。


そこまで観察した時、私の頭の中で豆電球が光った。



このマンション、いや、この億ションとも言える有名な建物の名前は。


｢｢梅川ハイタワー1号館！｣｣


あろう事か、私に説明しようとしてくれたトユンさんと声が重なってしまった。


周りを歩く人が私達の声に驚き、こちらを見る。


｢おっとやばいやばい｣


トユンさんは華麗にターンや首切りを繰り返し、意味もなくその場を歩き回って彼らの目から逃れながら、早口で言葉を続けた。


｢このマンションの名前を知ってるなら話は早い。梅川ハイタワー1号館は35階建てで、芸能人やアイドルとかも住んでる結構豪華なマンションなんだ。此処はセキュリティ一もしっかりしてて、芸能人とか俺みたいな特別枠？的な人は、それ専用のエレベーターを使う事になってる。瀬奈ちゃんはどっちも使っていいからね｣


一息でそう言った彼は、1度大きく息を吸って他の人の視線に入らない様に顔を下に傾けた。
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