約束~悲しみの先にある景色~
楽しかった冬休みが終わり、3学期が始まって1週間程経った、水曜日。


「瀬奈、話したい事があるの」


夕方。


いつもの様に中学校から帰ってきた私を迎えたお母さんの一言は、それだった。


「えっ、どうしたの?」


私の家は母子家庭な事もあり、お母さんはいつもこの位の時間帯には家に帰って来ない。


それなのにお母さんが家に居る事が不思議で、それよりも彼女が妙に真面目くさった顔をしているのが可笑しくて、私は少し笑いながら彼女に近付いた。


「んーとね…話、長くなるかもしれないから、リュック置いて、着替えてきて。話はそれから」


(え、何だろう…)


中学の話だろうか。


それとも、高校に上がってからの話だろうか。



私の通っている学校は中高一貫校で、エスカレーター式で高校へ入学する事が出来る。


だから、この受験シーズン真っ只中の1月にも関わらず、私は受験生とは違う中学3年生の生活を送っていた。


つい先日まであった冬休みも、私がした勉強は学校からの宿題だけだ。


あとはずっと、友達と遊んだり家でごろごろしたりして過ごしていた。


(勉強の事かな?…でも、私学校のテストの点数まあまあ良いし、だから…うん、何とかなるでしょ)
< 3 / 329 >

この作品をシェア

pagetop