迷子のシンデレラ

 二人で顔を見合わせて笑うと彼は手慣れた手つきで智美の耳元へイヤリングをつけてしまった。

「うん。似合うよ」

 真っ赤になっていく顔を隠すように俯いても、赤くなる顔は隠しきれない。

 彼の何気ない行動はあの日の彼を思い出させるし、何より、今までの紳士的な距離から踏み込まれて平常心を保てない。
 耳に触れた手、近い彼の顔、頬にかかる彼の息遣い。

「本当。可愛いなぁ」

 そう言うと、後頭部に手を当てられて腕の中に引き寄せられた。
 彼の男らしいにおいがふわっと香って胸の鼓動を速める。

 軽いリップ音がして、頭に柔らかな感触が降ってくる。

 全身が沸騰したように熱くなって体は解放された。


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