胎動
その言葉にあたしは噴き出した。


梓は大のチョコレート好きで、チョコレートさえあればどんなことで乗り越えられると、豪語している。


「友里、おはよう」


自分の席へついたところで長光透(ナガミツ トオル)が声をかけて来た。


透とは中学からの友人で、今はあたしの席の後ろにいる。


「おはよう」


「今日は大丈夫だったか?」


深刻な表情でそう質問してくるのは、あたしの家庭環境を知っているからだった。


気さくに話ができる透には、ついつい相談してしまう。


「大丈夫だよ。いつも通り」


そう言って笑顔を向けても、透は笑ってくれなかった。
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