私の中にキミがいる限り
グループの中でも誰も気が付いていないんじゃないだろうか。


あたしは目元が赤くなっている久美をマジマジと見つめた。


あたしに暴力を振るおうとしていたところを透に見られてしまったから、泣いていたんだろう。


「聞いてんの!?」


清香に怒鳴られてハッと我に返った。


「う、うん……」


「とにかくさ、久美はあんたのせいで透の前で恥をかいたんだよ!?」


そんなのただの言いがかりだ。


先に手を出して来たのは久美の方だ。


しかも、昼休みの廊下のど真ん中でだ。


透に見られる危険性は十分にあったはずだ。


あたしは思わず呆れてしまった。


だけど、それを表情に出すような事はもちろんしない。


「もう久美の邪魔しないでよ!」


清香はそう言うと、久美の手を取って大股であたしから離れて行ってしまったのだった。
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