キミガ ウソヲ ツイタ
父にとっては俺が今何をしたいのかとか将来どうしたいのかなどは関係なく、父の跡を継ぐために医者になるのが当然だと思っていたのだろう。

だけど俺は医者にはなんの興味もなかったから、ひたすらバレー部の活動に打ち込み、そのことで父から文句を言われないように、成績だけは落とさず必死でキープした。

この頃は父と二人きりでいるのが息苦しくて、「潤くんに勉強を教えてもらう」と言っては頻繁に潤くんの家に避難していた。

潤くんの家も俺の家と同じような理由で両親が離婚していて、潤くんはいつもイヤな顔ひとつせず弟のように気にかけて可愛がってくれた。

そして3つ歳下のいとこの玲司も、俺と同じようにしょっちゅう潤くんの家に居座っていた。

玲司の両親は離婚こそしていないものの、父親は浮気ばかりして家庭を顧ず、外に愛人を何人も侍らせていたので、母親は夫の度重なる不貞にひたすら耐えることで玲司を守っていて、夫婦の関係は事実上破綻しているような状態だった。

ずば抜けて頭の良い玲司は年齢のわりに大人びていて、小さな頃から両親のいびつな夫婦関係を理解していたようだ。

母親を苦しめる父親を憎みながらも、玲司もまた母親を守るために良い息子であろうと必死で耐えていたんだと思う。

その分俺や潤くんといるときは、年相応の子供のように甘えたりわがままを言ったりしていた。

< 9 / 61 >

この作品をシェア

pagetop