かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
第六章 彼女を見つけるための軌跡
「それで。話って」

瑠莉が交差点を渡り始めたことを確認して、俺は喜美江に切り出した。

もう、喜美江とはすれ違うことくらいはあっても、こうして真正面から向き合う機会などないと思っていた。それでかまわなかった。

彼女と別れることになったのは、俺がまだまだ子どもで浅はかだったせいだと自覚しているし、彼女の再婚相手の男性――おそらく、親父が手を回して連れてきたんだろうと俺は思っているんだが――は、聞けばそれなりに真っ当な人間で、彼女を幸せにしてくれるだろうと思ったから。

俺たちの破局と、彼女の婚約の順番は逆転していたが、お互い納得の上だったし、もうこれ以上、話すことなどないと思っていたのだが。

つい鋭い視線を向けてしまった俺に、彼女は心苦しそうに目を伏せて問いかけてきた。

「……私の、顔も見たくなかった?」

「いや。そんなんじゃないが」

彼女がどうこうということではなく、どちらかというと、瑠莉に誤解されたことだけが、気がかりだ。
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