かりそめ婚!?~俺様御曹司の溺愛が止まりません
「時間を取らせてしまって、ごめんなさい。まさかこんなことになるなんて」

「悪いのは沙之だ。気にしないでくれ」

喜美江さんは、私と颯志くんに一度頭を下げると「結婚式、楽しみにしているわ。お祝いのお花送るから」そう笑顔で告げて帰っていった。

きっと喜美江さん自身も、颯志くんと向き合うことが出来てスッキリしたのだろう。

見送る颯志くんの眼差しも、憑き物が落ちたみたいに清々しい。

「瑠莉。行こう」

颯志くんが、私の肩をぎゅっと抱く。見上げれば、慈しむような優しい笑顔を浮かべて私を見下ろしていた。

その眼差しが嬉しくて、でも、素直に喜んでいいのかわからなくて、ぎゅっと胸が痛む。

――『どうして兄貴は、瑠莉ちゃんを結婚相手に選んだんだろう』――

今、私は颯志くんの一番になれた?

心の中で彼に問いかけるけれど、とても口には出せなくて、促されるまま颯志くんの隣を歩き続けた。
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