Beast Love
離れている席からガタガタと椅子を持って来たハルカくんは、これまた可愛らしいウサギの袋からお弁当を取り出し、パカッと開く。


中からはタコさんウィンナーやハートに型取られた人参が飛び出してきた。


「わぁ、可愛いっ! 自分で作ったの?」


「うん、そうなんだー。僕、可愛いものが大好きで。だから、自分も可愛くなりたくて、女装に走っちゃったのもあるんだけどね」


じょ、女子力高いな……と、謎の引け目を感じつつ、私も自分のお弁当箱を開ける。




「ノゾミちゃんのは、どんなお弁とっ……」


ハルカくんの動きがピタリと止まった。


真っ白な米飯の上にチョコンと乗った梅干しという日の丸の横に、少し茶色く焦げた卵焼きが詰められている。


それが本日の、私のお弁当である。


「うち、親が仕事でいなくってさ。おばぁちゃんが早起きして作ってくれたみたい。ハルカくんのに比べたら、渋いでしょ?」


なんて苦笑いしつつもお弁当を作ってくれた祖母に感謝していると、目の前の男子はぷるぷると肩を小さく震わせていた。


あ、笑ってるのかな。小馬鹿にしてるのかなぁ。


なんて、そんな不安は不要だったようだ。


バッと顔を上げ、私の両手を取るハルカくんの顔は、輝いていて。






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