Beast Love
***


「んだよここ! ガキと女しかいねぇ」



黄色一色に染まるシトリンゾーンに足を踏み入れた瞬間、マサトが怒気を含んだ声でそう叫んだ。


アーケードから垂れ下がる、ビタミンカラーをしたフラッグ・ガーランド。


心を躍らせる、人気アーティストが楽曲を手掛けるテクノポップな BGM 。


足元に広がるは黄色に塗られた通路と、宝石のように輝く星の形に形どられたラメ材。



目の引く至る所に張り付けられた、このゾーンのモチーフキャラ、ひよこの“ハッピーくん”のシルエット。


ポップでキュートな世界観にたじろぐ、高校トップの不良くん。



「なんなんだ、ここ。無性に落ち着かねぇ」


「えー? 入れないのー? 入り口であれだけ意気揚々と息巻いていらっしゃったくせにぃ?」



ぷぷっと吹き出しながら目を三日月にして小馬鹿にしていると、腹いせに頭をわしゃわしゃと乱されてしまった。


「うるせぇ」


イタズラに髪を掻き回してくる腕をパッと手に取り、私は彼をあるアトラクションの方へと引っ張っる。


「はい、つべこべ言わずにあれに乗りまーす!」

「……ハッピーゴーカート? おっ、ゴーカートか! 面白そうじゃねぇか」


この時の私は、彼のペースに乱されまいと必死過ぎて、ある事に気付いていなかった。

「早く早く! 結構並んでるよっ」


そう、極々普通にマサトの手を取っていたことに。


この事実に気付いて後に赤面するのは、家に帰ってからのことである。

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