Liebe


「どういうつもり? エリーにあんなもの渡して」

「俺の勝手だろう」

「妹に指輪をプレゼントする兄なんている?」

「あいつは妹じゃない」

「あの子はエリーよ」

「お前の言うエリーはエリカのことだろう」

「当然でしょ」

「いつまであいつをエリカの代わりにするつもりだ」

「何言ってるのよ。誰よりも代わりが必要だったのはウィルでしょ」

「エリカはエリカだ。他の誰かが代わりになるようなことはない」

「エリーはあんたの妹よ」

「……やっぱり、そういうつもりで名前を」

「当たり前じゃない! あの子はそのために来たの! 絶対そう!」

「アンナ」

「そういう運命なのよ。だから海で倒れていたの。彼女は、あなたの妹の代わりになるためにここにやってきたのよ」



聞いていられない。

静かにその場を去り、部屋へ戻る。
リヒトは心配そうに見つめている。

電気も付けずに、ベッドに腰掛ける。



手の震えが、止まらなかった。

< 190 / 305 >

この作品をシェア

pagetop