恋は、秘密主義につき。
「ひ、人前じゃダメっていつも言ってるじゃないですかぁっ」

ムンクの叫び。
周囲の目には、どんな状況に映っているんでしょう。怖くて考えたくないです。考えてしまったら、明日から会社に来られなくなります~っ。

「うるさいよ。いっつも仲直りはキスって決まってんじゃん」

じろりと上から()めつけ、平然と言い放つふーちゃん。
もう、どこをどう修正したらいいのか、脳内が砂になっていく私。

「双葉!」

そこに鬼気迫った声が飛んできて、涙目で振り向けば。

「どうした美玲?! また、双葉に泣かされたのか?!」 

今度はたぁ君が体を屈めて、ハンカチを優しく目尻に押し当ててくれる。

「立兄もうるさいな。ぼくだからミレイを泣かせていいんだよ。・・・てか、なんか用?」

「大ありだ。勝手なことはするなと愁ちゃんにも言われてるだろうが」

すっくと仁王立ちして、眼鏡のブリッジに手をやりながら威圧感を漂わせるたぁ君を、ふーちゃんは鼻先であしらいます。

「ただの挨拶だよ。ミレイに近付くなって、鳴宮に親切に警告してやっただけ」

「それが社会人の挨拶か!」

「・・・・・・オモシロすぎ。楠田劇場」

ぼそっと一実ちゃんの呟きが聞こえた気がしました。
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