恋は、秘密主義につき。
10-3
それなりに盛り上がったゲームの余韻の中、徹おじさまが今日のお礼と今後の引き立てをお願いする締めの挨拶をして。ジャズバンドが少しメロウな曲を奏ではじめる。

出口付近では招待客にもれなく返礼の手提げ袋を配りながら、受け取った人からゆるりと会場の外へと流れ出ていく。

「おじい様が待っているから行こうか」

私達もホテルのロゴ入りのそれをいただき、兄さまに優しく促されてフロントとは違う方向に、カーペット敷きの通路を進んだ。

普段は結婚式の控え室にもなるのだろうか、観音開きの木製のドアが離れて並ぶ一画。
一つ二つ通り過ぎて立ち止まった兄さまが、ノックはしないでおもむろにドアハンドルに手をかけた。

上品なレースカーテンの下がった明かり取りの洋窓。広い室内はクラシックな雰囲気で、シャンデリア風の照明と、テーブルを囲んでコの字型に置かれた高級感のある布張りのソファが、まるで貴賓室を思わせる。

「おお、レイちゃんだ! 会うのは正月以来だったかなぁ。ほらほら、ジィジのそばにおいで」

窓を背に上座に腰掛けたタキシード姿のお祖父さまは、私を目に留めるなり満面に笑みを崩した。
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