恋は、秘密主義につき。
10時半を少し回ったくらいで娘を家まで送り届けてくれた征士君を、例のごとくママは大歓迎。予定を訊き出すと、いつの間にか連休の最終日に彼を我が家に招待しています。

「じゃあ、お待ちしてますねぇっ」

語尾にハートマークが見えそうなママを玄関の中に押し戻し、私一人でお見送り。

「ママが強引ですみません」

「嬉しいに決まってるよ。気に入ってもらえてるんだから」

申し訳なく言えば、車の脇に立った征士君はクスリとして見せた。

「それにまたレイちゃんに会える」

目が合うと。前屈みになった彼が、前髪の上から私のおでこに熱っぽい吐息をやんわり押し当てた。・・・3度目。

「お休み。あとでラインするな」

「おやすみなさい。気を付けて帰ってください」

「ん。・・・保科さんにも宜しく」

ドアに手をかけ半身を傾けた眼差しのその奥には、どことなく挑む気配も感じた。

「伝えておいて。俺はレイちゃんを大事にします、って」


甘いのに強かな微笑みを残して。
闇の向こうにどんどん、テールランプの灯りが小さくなっていくのでした。


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