恋は、秘密主義につき。
夜ご飯もお風呂も済ませてベッドの上に寝転び、自分の部屋のテレビでバラエティ番組を観ながら寛いでいた時のことでした。

スマートフォンが着信のメロディ音を鳴り響かせ、慌ててヘッドボードに手を伸ばして手に取る。誰でしょう? 
画面に表示された『ふーちゃん』の5文字に、思わず固まった私。一瞬、応答するのを躊躇ったくらいに。
でもそんなことをしたところで、ふーちゃんには敵うはずがありません。
出るまで鳴らし続けるのが、ふーちゃんです。大きく深呼吸をして覚悟を決めると。かすかに震える指でタップした。

「もしもし、ふーちゃん・・・?」

恐る恐る。

『出るの遅いよ、ミレイッ。ぼくからのコールは3回以内って言ってるでしょ!』

不機嫌そうな声で、いきなりのお説教モード。
ああ・・・紛れもなく、ふーちゃんです。同い年の従兄弟の。

『これからそっち行くから、今晩泊めてよねっ』

どうやらどこかの駅から掛けてきているようです。ホームのアナウンスらしき音声も聞き取れました。

『電車来たから切るよ? 後でね!』

言いたいことだけ言って途切れた通話。
えぇと。なんでしたっけ・・・? 『これからそっち行く』・・・?

「ま、ママっ、大変です! ふーちゃんが来ます~っ」

2階からパタパタと駆け下りた私は、青ざめてリビングに飛び込んだのでした・・・・・・。
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