恋は、秘密主義につき。
遠慮したものの、貝をお腹に乗せた愛らしいラッコのぬいぐるみと、2頭のイルカが向かい合って口先と尾びれをくっつけ、ハート型になっているチャームを征士君が買ってくれ、外に出てから施設内のフードコートで少し休憩をすることにした。

広いテラスに、パラソルを立てた丸テーブルとイスが置かれたオープンカフェ。室内の席もあったのだけど天気も好かったし、開放感があって気持ちがいい。

今日の私は、レモンイエローのスキッパーシャツに、白地に大き目な花柄模様のロングスカートっていうコーディネイト。カジュアルとエレガントの間を取った感じで。
いつも日本人形みたいだって言われる、セミロングのストレートヘアは、花びらをかたどった髪留めでハーフアップにしてある。

風が時折り、やんわりと後れ髪を揺らすのを任せたままに、冷たいアイスティで喉を潤しながら。テーブル越しに向かい合う征士君とは、いったい何を話せばいいものやら。
カップに視線を落とすフリで、構えてしまっていると。

「レイちゃん、顔が困りすぎだろ」

クスリとした笑い声。
顔を上げれば、テーブルに頬杖をついた彼が視線を傾けて悪戯っぽく笑んでいる。

「分かりやすくて変わってないから、逆に安心した。もちろん俺も、ずっと変わってない。だから10年前の約束を果たしにね」 

「約束、・・・ですか?」

「大人になったらレイちゃんを迎えに行く、ってプロポーズ。お姫さまは忘れちゃったらしいな」

きょとんとしてる私に征士君は、涼しそうに言った。
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