そのままの君が好き〜その恋の行方〜
野球部のそれも、甲子園で優勝するような高校のエ-スだったんだから、さぞモテただろうと、大学で出来た友達には冷やかされたが、前に言った通り、チ-ムが強かった時のエ-スは俺じゃない。


母校の黄金時代を築いたのは、俺達の1つ上の先輩達で、彼らを目当ての女子は、グラウンドに群がっていたが、俺達の代に目を向けてくれる子なんて全くといっていいくらい、いなかった。人呼んで「非モテ世代」、ひどいもんだ。


そんな俺でも、大学に入ると彼女が出来た。と言っても大学で出会ったわけじゃない。高校の2年後輩だった白鳥唯(しらとりゆい)だ。


唯は野球部の1年先輩、俺の前のエ-スだった白鳥徹(しらとりとおる)さんの妹で、中学生の頃からよく、部に遊びに来ていた。


とにかくお兄ちゃん命の子で、お嬢様育ちの天真爛漫娘。俺なんか、先輩の子分扱いで年上なのに「ソウくん」なんて呼ばれて、タメ口。でも根は純真で可愛い子で、なんか憎めず、俺は何かと面倒を見ていた。


正直、俺の方に気があったのも確かだけど、でも先輩の妹を口説くのも、なんか恐れ多かったし、唯にとって俺はそんな対象じゃなくて、よく可愛がってくれるお兄さん。本当のお兄さんであるはずの白鳥先輩の方が、恋人といった風情で、まぁ仕方ないなと思っていた。


卒業式の日、会いに来てくれた唯が


「卒業しても、連絡ちょうだいね。」


と言ってくれたけど、それはいわゆる社交辞令という奴。ありがとう、またねと笑顔で返事をして、別れた。


その後の春休みは進学準備や、友達と遊びまわるのに忙しく、4月に入れば、新しい環境でバタバタしながら過ごしているうちに、あっという間に時間は過ぎて行き、明日からGWで、大学もしばらく休みという日の夜だった。
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