そのままの君が好き〜その恋の行方〜
仕事が終わり、なんとか終電に駆け込んだ私。やれやれと思いながら、周りを見回すと忘年会シ-ズンに入ったということで、ご機嫌なサラリーマンやOLの姿が目に付く。


ちょっとうらやましい気持ちを抱きながら、空いていたつり革を確保した私は、携帯を取り出した。


着信やメ-ルはなかったけど、グル-プLINEが入っていた。開けてみると、沖田くんからで


『年末の慌ただしい中、みなさんお疲れ様です。突然ですが、私、沖田総一郎は一身上の都合により、年内いっぱいで約3年勤めたA社を退職することを決め、本日上司に退職届を提出しました。またそれに合わせて、このグル-プLINEも抜けさせてもらうことにします。新年からは、心機一転、新たなスタ-トを切りたいと思っています。LINEは抜けますが、これからも変わらぬお付き合いをお願いします。ご多忙の折、お身体には十分お気をつけください。まずはご報告まで。』


なんとも突然で他人行儀な内容に、私も驚いたけど、他のみんなもビックリで、慌てていろいろ聞いてるけど、沖田くんの返事は「いろいろあって」「思うところがあって」とはっきりしない。変わらぬお付き合いを、と言いながら、グル-プLINEを抜けるというのもよくわからないし・・・。


塚原くんだけは、LINEをしてる形跡がない。恐らく彼は直接電話で問い詰めてるんだろう。私も気になるが、時間も遅いし、正直沖田くんとは、気まずくなってしまってるし、結局はヤキモキすることしか出来なかった。


次の日、私は仕事の合間を縫って、悠や由夏に連絡を取ってみるが、彼女達も事情は掴んでなかった。由夏によれば、予想通り塚原くんは直接話したそうだが、やっぱり沖田くんは多くを語らなかったらしい。


気にはなるが、仕事はたて込んでるし、なにより私は直接彼と話せない状態なのが致命的。申し訳ないけど、それ以上は考えないことにして、私は業務に戻る。


そんな私のデスクの電話が鳴ったのは、6時過ぎのことだった。出ると守衛室からで


『A社の三嶋さんとおっしゃる方が、面会されたいと見えてますが。』


えっ、三嶋さん・・・?彼女がなぜ、私を訪ねてきたのか、その理由に全く心当たりがない。仕事上のことではないだろうし、なにより彼女とは偶然2度会ったことがあるだけで、当然付き合いもない。


ただ、沖田くんの恋人である彼女に聞けば、いろいろと事情がわかるだろうし、彼女が来たのも沖田くん絡みのこととしか思えない。


とりあえず、会ってみるしかないと思った私は、上司の許可を取って、通用口に向かった。
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