そのままの君が好き〜その恋の行方〜
神戸の繁華街、三ノ宮を2人でぶらつき、ガイドブックで目を付けてたステーキハウスで、ちょっと贅沢なディナーを楽しんだ私達。


お店を出た私達が向かったのは、六甲山だった。日本三大夜景の1つに数えられるこのデートスポットは、カップルで神戸に来たからには、是非とも訪れたい場所だった。


三ノ宮から私鉄、更にはケーブルカーに乗って、到着した私達。そこは既に多くのカップルや若者のグループで賑わっていた。


「あっちだ。」


そう言って、私の手を引いて走り出す総一郎。そして、眼下に広がる「一千万ドルの夜景」を見下ろす。


「きれい・・・。」


「うん・・・。」


それは評判に違わぬ美しさと迫力だった。私達は、いつしか寄り添い、言葉もなく、その宝石のような光景に見入っていた。


「よかった。」


やがてポツンと総一郎が呟いた。その声に、私は彼に視線を向ける。


「この時期は、下界と山頂との気温差で、結構霧が出るって聞いてたから。正直、ヒヤヒヤしてた。だから本当によかった。この景色をどうしても見たかったから、加奈と一緒に、絶対に・・・見たかったから。」


そう言うと、総一郎も優しく私を見つめる。


「うん。ありがとう、総一郎。」


そう言って笑顔を交わし合った私達は、また夜景に視線を戻す。


「加奈。」


やがて、また私の名を呼ぶ愛しい人の声。


「なに?」


小首を傾げながら、私はその声に答える。


「ゴメン。」


「えっ?」


「なかなか会えなくて、寂しい思いをさせてると思う。僕が転職なんかしなければ、ここまでのスレ違いには、なってないはずだから。申し訳ない。」


そう言って、私に頭を下げる総一郎に、私は首を横に振る。


「そんなこと言わないで。寂しくないなんて、強がり言うつもりはない。正直、これでいいのって思う時もある。でも、私達はもう1年前の私達じゃない。あの時の、あやふやで、お互いの気持ちがわからないで、不安を抱えたまま、カレカノの真似事をしてた私達とは違うよ。」


そう言って、私は総一郎の目をジッと見る。


「私はあなたが好き、あなたも私のことを好きでいてくれてる。それを今は、お互いにちゃんとわかってるから。1年前だったら、声聞きたくても、メールでもいいから話したいと思っても、ああ仕事大変そうだし、疲れてるだろうからって、遠慮し合って。でも今はもう違うよね。」


確認するように私は言った。
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