一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
1 プロローグ


『俺じゃダメか?』

 私と彼以外、誰もいなくなったオフィス。帰宅しようとした私の腕を彼がギュッと引き止めた。

 さっきまで冗談を言い合っていたのに、もう誤魔化せない空気。真剣な黒い瞳が私の目を捕まえて離さない。

 逃げられない……と私は本能的に感じていた。

『お前が他のやつを好きだったとしても、絶対諦められない。俺じゃダメか?』

 彼は同期だ。それ以下でもそれ以上でもないと思っていた。でもその真剣な眼差しが、"それ以上" を望んでいるのだと私に訴えてくる。

 どれだけ見つめ合っていたのか……きっと数秒のことなのに、とても長く感じた。自分の心臓の音が耳にドクドクと響いてうるさい。

(こんな顔、するんだ……)

 普段からモテる彼の、この真っ直ぐな瞳を知っているのは何人いるんだろう。いつも会社の女子たちとニコニコ話している彼とは違う。

 整った顔立ちが次第に近づいてくる気がして、思わず私は今の気持ちを口に出した。





A.「……わかった。か、考えさせて!」

B. 「ごめん!」と言って走り出す。
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