一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 うどん屋を出たところで、偶然、美月を見かけた。
 今日は珍しく休暇を取っていた。実家の用事だと言っていたが、何故ここに?

「あれ? 高峰さん? ……誰といるんだろう?」

 奈良崎も俺に続いて美月に気付いたようだ。
 見ると、誰かと話している。待ち合わせだったようだ。

 若い……男?

 見るからに彼女より年下の男。
 茶髪、白いTシャツにベスト、細身のジーンズ。
 身なりは良いが頼り甲斐は無さそうで、高校生くらいにも見える。アイドルのような容姿で、悔しいが顔は整っている。

 柔らかく微笑む美月。
 待ち合わせにアイツが現れたことを安心するような、穏やかな笑顔だった。

 美月とはとても仲の良さそうな雰囲気で、自然に近くのカフェへ入って行った。

「……なに、あれ?」

 奈良崎が聞いてきたが、こっちが聴きたい。
 男嫌いの美月が、あんなに打ち解けている男。あれは、誰だ?!

 そういえば携帯を見てはにかんでいたことがあった。あれは誰だったのか。
 もしかして、コイツ?

 まだ高校生くらいにみえた。
 なよなよとした身体、今どきの若者。

 ただ、一緒にいる美月はとてもリラックスしていた。

 思い出すのは偽装婚約を申し出た時の会話。

『お見合いを止めてくれそうな恋人がいる……かな?』
『いえ! いません』

 高校生なら頼れない。
 未成年なら頼れない。
 俺は、ただ丁度良いだけだったのかもしれない。

 キスを許してくれた君は、どんな気持ちだった?
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