一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「……わかったわ!! そんなに美月のことを想ってくださって! お見合いの話は無しにしましょう」

 麗華さんが感激している。作戦成功のようだ。高峰さんも嬉しそうに微笑んでこちらを見てくれた。ミッションコンプリート!
おめでとう俺!

 しかし、所長は先程から目頭を抑えている。何故だ。

「そうね! 良いことを思いついたわ! 結婚の前にまず同棲なさい!」
「どどど、同棲!??」

 ギョッとした顔の高峰さんが叫んだ。え、今同棲って言いました? あの高峰さんと俺が?

 舞い上がる俺とは裏腹に、高峰さんは慌てている。それを麗華さんは突っ込む。

「あら? 大好きなダーリンと一緒に暮らしたくないの?」
「い、いずれは……。でもまだお付き合いを始めて日も浅くて……」

 いずれ、とちゃんと婚約者っぽく話を続けてくれる高峰さん。こんな話になってやっぱり交際は嘘です! と暴露しないのは、所長が俺をクビにしないように、かな。

「いいじゃなーい! こんなイケメンを朝から晩まで拝めるのよ! はい、けってーい!」

 所長は全く口を挟まない。こうなったら誰にも止められないのだろう。そういえば高峰さんがお母様の思い通りにならなかったことはないと言っていたような……。

「引越し業者手配ー! 笹川さーん!」

 どこからともなくSPのようなパンツスーツの女性がやってきた。

「はい奥様」

「今から来てくれる引越し屋さん手配して! 美月引越します!」
「はい奥様」

「「「ええええええ」」」

 所長と俺、高峰さんの、驚愕の声が、大豪邸内に響き渡ったのだった。
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