一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「でしたらシャワーの後、少し眠ってください。今日の資料は出来てますから」
「ありがとう。じゃあシャワーを浴びてこようかな」

 大きなあくびをしながら、先生が席を立った。執務室に泊まることが多い先生は、ロッカーの中に着替えも完備している。お着替えセットを持った先生は、シャワールームに向かうべくドアを開けた。そこで振り返り、眩しい笑顔でこう言った。

「あ、高峰さん。今日もコーヒー美味しかったよ。ありがとう」
「い、いえ!」

 極上のイケメンスマイルをいただいた。西園寺先生は、いつもこうしてどんな些細なことでもお礼の言葉を忘れない。

 世の女子たちを虜にしている理由がよくわかる。朝からパラリーガルにまで、愛想を振りまくのはやめていただきたい。三次元(リアル)のイケメンは心臓に悪い。

(二次元こそ正義……二次元こそ理想のイケメン……!)

 思わずキュンとした胸を鎮めるべく、心の中で唱える。今度こそ先生がシャワールームへと移動されたのを確認して、私は片付けをはじめた。

 西園寺先生の仕事に対する姿勢は尊敬している。どんなにご多忙でも一人一人に真摯に向き合って、最後まで諦めない。

 かっこいいと思う。

 でもご自分の時間が無いのでは、と専属パラリーガルになってひしひしと感じていた。プライベートの用事で早く帰宅されるところを見たことが無いのだ。

(お付き合いされてる方はいないのかな。彼氏がこんなに働き詰めだったら、どう思うのかな……)
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