legal office(法律事務所)に恋の罠

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「なんだよ。俺は客だぞ?それぐらいのサービスをしてもらってもいいじゃないか!」

「失礼ですがお客様、彼女は当ホテルのクリーンスタッフであって、メイドではございません。同意もなしに写真を撮るのは盗撮、過剰な要求はつきまとい行為と判断します。これらは迷惑行為もしくは業務妨害とみなし、刑事や民事訴訟の対象としますがそれでもよろしいですか?」

Hotel Bloomingのクリーンスタッフのユニフォームはとても可愛い。

一緒に写真を撮って欲しいという依頼はまだ可愛いものだ。

肩を抱く、つきまとう、などの行為にエスカレートし、そうしたお客様からのセクハラに悩むスタッフが今日もいる。

「なんだよ。あんた、ここの主任か?ずいぶん綺麗な姉ちゃんだけど、代わりにあんたがメイド服を着て写真を撮ってくれてもいいんだぞ」

朝からアルコールが入り、気が大きくなっている男は、エレベーターホールで大きな声を出して叫んでいた。

スタッフの緊急コールでホールに降り立った和奏は、いつものアイアンフェイスで仁王立ちしていた。

腕を掴んで引き寄せようとする男をさっとかわすと、和奏はポケットから名刺を取り出す。

「申し遅れましたが、私はこのホテルの企業弁護士の夢谷と申します」

男は弁護士と聞いて、あからさまに表情を青くする。

「な、なんだ、大袈裟だな。写真くらいでごちゃごちゃ言うなよ」

「お客様、当スタッフの対応に何かご不満でもございましたか?」

戸惑う男に追い討ちをかけるように、社長の奏が声をかける。

「私は当Hotel Blooming東京のCEO、桜坂でございます。何なりとご不満をお申し付けくださいませ」

スーツに身を包んだ美男美女に、にこやかに見下ろされ、男は

「いや、特に問題はない」

とそそくさとその場を後にして行った。
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