legal office(法律事務所)に恋の罠
「どうしてあなたがここに?仲川社長はあなたの保釈金請求に応じなかったはずでしょう?」

アイアンフェイスに戻った和奏が、強気な姿勢で将生に言い返した。

「父の有能な弁護士が、父を説得してくれたんだろうね。保釈金を出してくれてさ。あんたの住所まで教えてくれた」

有能な弁護士とは、宇津井のことか?

奏は、莉音だけでなく和奏にまで手を出そうとしている将生に怒りを覚えた。

それだけではない。

宇津井の卑怯なやり方に、反吐が出る思いだった。

「莉音には接近禁止令を出されたしさ。今後の金づるが必要じゃん。弁護士で独身のあんたなら、って思ったけど、莉音の兄貴のお手付きじゃ相手が悪いな。他を当たろうっと」

フラフラと歩き出す将生も、酒を飲んでいたに違いない。

奏が長い足をスッと前に出すと、足元の覚束無い将生はそれにつまづいて派手に転んでしまった。

「てめえ、わざとやったろ」

「おや、失礼。タクシーに乗っていて足が痺れたから、膝を伸ばそうとしたんだが長すぎたかな」

奏の言い種に、和奏も思わず吹き出してしまった。

「ちっ、お前だって、兄貴にかかればあっという間に叩き落とされるんだからな」

虎の威を借るなんとやら・・・。

"覚えてろよ"

とお約束の言葉を残して、将生はマンションを去っていった。

< 60 / 107 >

この作品をシェア

pagetop