legal office(法律事務所)に恋の罠
「お疲れ様。貴方が次の顧問弁護士ね」

次に呼び出しだのは秘書課の女性だった。

丸山美佐紀29歳、上役担当のグループ秘書だ。

身体のラインを強調した服に、大きく胸元の開いた服はおよそ秘書らしくない。

化粧は派手で、赤い口紅は人を食べたのかという位に真っ赤だ。

和奏は、先程の戸松にした自己紹介と同じように挨拶をした。

「要するにセクハラなんかの女性被害に関する情報を探しているのね」

和奏を見下したようにジロジロと眺める丸山は、短いタイトスカートから惜しげもなく綺麗な太股を見せて足を組んでいる。

「まあ、重役クラスやそのお客様からの視線と言葉のセクハラはしょっちゅうね。先日は新任の桜坂CEOからも声をかけられたわ。まあ、彼の場合、私も同意のもとだから問題ないわね」

丸山は、表情を変えない和奏を面白そうに眺めて言葉を重ねる。

「先日、副社長と桜坂CEOと一緒にお得意様の接待に同行したのね」

ネイルアートを施した爪を交互に触りながら、

「接待が終わったら、CEO、私を路地裏に連れ込んで抱きついてきたわ。そのまま・・・ここまで言えばわかるわよね」

と、肝心なところはぼかして伝えてきた。

「そのような関係があったということですか?」

「想像にお任せするわ。こっちはその件で訴えるつもりはないわ。むしろ極上の男のターゲットにされてこっちが得した気分」

和奏の質問に嬉しそうに答えた丸山だが、和奏から予想したリアクションが取れずに不服なのだろう。

更に無駄話を重ねてきた。

「でも、ああいう何もかも完璧な男のお相手になる方は大変よね。女一人では満足できそうにないし、引く手あまたで誘いを断るのも大変そうだしねえ」

「そうなのかもしれませんね」

「まあ、あなたみたいに堅物は相手にもならないでしょうけど・・・。あら、ごめんなさい。私、弁護士相手に余計なことを」

しかし、そんな彼女の挑発には乗らず、アイアンフェイスに笑顔を張り付けた和奏の態度は最後まで崩れなかった。
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