レンダー・ユアセルフ

/メリットだらけの友好条約




事態は彼女の知らぬところで着々と進展を迎えていた。



「アリアナはまだ見付からないのか!?」

「陛下。お疲れのようですし、やはりお休みになられないと…」



紛糾するチューリア王宮内。玉座の間にて淡々と告げられる部下からの報告は須《すべから》く全てが同じ内容であり、彼女の父である国王にもさすがに焦りが見え始めていた。






結婚を控えていた娘、アリアナが失踪したのである。勿論この事実は市井に公表されていないものの、婚約者であるジーファまでもが自国へ帰還したため噂が囁かれるのも時間の問題であると窺えた。



「いや。私が休んでいる間にも、娘の身に何かがあったらと思うと…安々と眠ることは許されないだろう」



疲弊を募らせた王は眉間を強く寄せて溜め息を吐き出す。

普段温厚であるがゆえに、いつもの笑い皺が陰りを見せ臣下たちも心配を隠せずに居た。






しかしながら、国王にはどうしても疑問に思う点があった。アリアナの失踪が明らかになる少し前にジーファがチューリア王宮を離れたという情報が、ある臣下から寄せられていたのだ。

不躾に大国であるユースヒトリの王子を疑うことは憚られたものの、もし仮に彼がアリアナの身を確保していたとして何の問題も無い筈である。


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