レンダー・ユアセルフ



「(一体何を考えている…?)」



眉根を寄せてユースヒトリの王子を睨め付け、思案を巡らせる。

しかしながらジョシュアが考え込んでいる間にも、ジーファは己の提案を通そうと声を張り上げてこんな言葉を口にした。





「私の命が続く限り、シャムスへ戦の剣は取らぬことを此処にお約束しよう」





話が上手く出来過ぎている。ジョシュアがそう感じたのも無理はない。









「……それではシャムスに得なばかりだ。ユースヒトリ国王子よ、そなたの要求は何だ?」



列強に名を連ねるユースヒトリが小国であるシャムスと和平を結んだところで、一体何の目的を成せるというのか。

一向に相手の胸の内を読むことが叶わないジョシュアは遂に口を開いたのだが、ここでジーファが待っていたと言わんばかりに口角を上げ驚くべき一言を突き付けたのだ。







「目的は唯《ただ》一つ。―――貴殿の愛する者を幸せにすると、今ここで誓って欲しい」







臣下達の間でどよめきが広がる。

一体何のことなのかと画策する声があちらこちらで上がり始める。

この中でジーファの言葉の意味を理解できた者は、当人の他にただの二人だけであった。


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