レンダー・ユアセルフ



眉尻を下げジョシュアを見上げる蜂蜜色の眸。幼い頃からずっと慕ってきた彼女に向かって、彼はたった一枚の便箋を差し出す。




――彼女がこれを読んで戸惑いを顕わにするならば、ジョシュアはアリアナを諦めようと決意してこの場所を訪れていた。

願わくば、どうか安堵して欲しい。ジーファとは何も無くて、だからこそ自分に全てを捧げられると安堵してくれるならば――ジョシュアはそう望まずには居られない。

固唾を呑んで彼女の動向を見守る。そんなジョシュアの胸中を露知らぬアリアナは、憎き相手ジーファからだという手紙の側面を数秒見詰め――徐に中を見開いた。






「ッ」







瞬時に彼女の顔色が変わる。それと同時に、ジョシュアは深く目を閉じた。



「何よこれ…、アイツと私は、何も無かったって事…?」







驚き戸惑うアリアナの声音がじわりと耳朶を撫ぜた。彼の胸に宿る彼女への情熱が、激しく燃え上がっている。

ジョシュアは瞑目した暗闇の中で、その炎の在る処を固く閉ざす決意をした。


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