レンダー・ユアセルフ

/王子と王女の結末




喉が焼け付くように痛い。けれど、ここで立ち止まる訳にはいかない。



「っ、」



粛々とした洗練さを求められる淑女が、大の男に追い掛けられる場面に遭遇したら直ぐに捕まってしまうだろう。

しかしながら彼女は延々と走り、数多にも及ぶ追っ手から逃げ続けていた。






カツン、カツンと。華奢な脚を包むヒールが甲高く鳴いている。

お転婆とはよく言ったものだ。少しでも長くリリアに敵の目を向けさせないため、アリアナは渾身の力を振り絞って走り続ける。

見事な逃走劇を演じていた彼女であったが、行き着く先が行き止まりだと気付き足を止めざるを得なくなった。










「ご機嫌麗しいですかな、アリアナ王女」






勝ち誇ったような笑みを浮かべ、連なる兵士たちの最奥から姿を現したのはやはり――


「……残念ながら、貴殿のおかげであまり気分が優れませんわ。コターニャ侯爵」






もはやニヒルな微笑を隠すことすらせず、欲望に渦巻いた眸と豪奢な身なりでアリアナを追い詰めた男。

リリアと別れてからどれほど時間が経っただろう。

城にたどり着いていたとしても、この国の王子に謁見しなければ話は進まない。

まさかこの短時間で身辺調査を終えジーファと対面まで果たしているとは到底思えず、全くもって万事休すといったところである。


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