レンダー・ユアセルフ





「……縁談…?」

「そうよ。ユースヒトリのジーファ王子が、貴女を是非花嫁にとおっしゃっているの」

「……ジ、っ!?」

「アリアナ?」

「……姉様」

「なによ?」

「もう一度言ってくださらない?」







無意識の内にわななく唇を引き結び、怪訝な顔付きを隠そうともせずにそう問うたアリアナ。

実の妹の真摯な表情を見つめながら、頷いた姉は再度同じ言葉を繰り返す。







「ユースヒトリ。さすがに知っているでしょう?」







じわじわと彼女の身体を蝕んでいく姉の台詞。

アリアナがどれほどのダメージをその痩躯に受けているかなど露知らず、寧ろ善意で言葉を重ねるリリアは追い打ちをかけるかの如くこう告げた。








「その強国の第一王子、ジーファ様。その方が貴女に求婚しているのよ」


















ふらりと覚束ない足取りでアリアナは自らのベッドへと身を投じた。

頭が壊れてしまうんじゃないかと疑うほど、膨大な量の知識を脳に詰め込まれた気がする。

念願叶って漸く解放されたのは良いものの、身体は至極疲れきっていた。




それに、どうしても信じられない。あの金髪碧眼の男が、自分に求婚しているだなんて。

きっと何かの間違いに決まっている。

もし仮に本当にアリアナを見初めての縁談だったとしても、正直彼女にとって迷惑以外の何物でもなかった。









「……あんな軽い男、願い下げだわ」









懇意にしている酒場の店主の言葉を忘れる筈がない。




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