レンダー・ユアセルフ




加えて先刻己の心中を察してしまったアリアナだ。幾らジョシュアが彼女を大切にしたいと考えていてくれていても、きっとアリアナ自身のその思いは彼の其れに比べるまでもなく劣ってしまう。





「……ありがとう。ミーア、一つだけ聞いても良いかしら」

「何でございましょう?」

「《大切》だと思う心は、どんな種類でも引けを取ることはないと思う?」





彼が向けてくれる心に勝るものを持っているとは思えないけれど、彼女自身ジョシュアを大切な存在と思っていることに変わりは無い。

だからこそ他の人間の考えが知りたかった。自らの存在をマイナスだと決め付けてやまないアリアナだからこそ、微々たるものだとしてもその心を大事にして良いものか。

これからジョシュアと向き合うたびに罪悪感ばかりが胸を焦がすなど、自分だけの問題に留まらず、きっと彼をも不安にさせてしまう。





「勿論にございます。一度大切だと思った人間からは、そう易々と目を逸らすことはできないものです。少なくとも私はそう思います」





彼女の言葉を耳にした瞬間に脳裏を掠めた人物を瞬時に取り払い、穏やかに瞳を細め笑むジョシュアの姿を思い浮かべる。

こういったときに一番に思い起こす人物は、いつか『あの男』ではなくジョシュアになれば良いと強く望んだ。



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